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飲む日焼け止め、成分・効果に期待できる?正しい紫外線対策を考える

ビーチ 海
日焼け止め

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待ち遠しかった春が訪れ、日焼け止め対策を考え始める季節。

日本では経口サプリメントの「飲む日焼け止め」が人気を博し、売り上げも年々増加しているようです。飲むだけで日焼け止めができるならとても嬉しい話ですが、どの程度の効果があるのか、専門家の話を基にご紹介します。

そのうえで、光老化、紫外線による肌の衰えを少しでも抑えるために、正しい紫外線対策について考えます。

飲む日焼け止めの主な成分

飲む日焼け止めの効果を考えるためには、まず配合成分を知る必要があります。飲む日焼け止めの成分として主なものは「フェーンブロック」と「ニュートロックスサン」があり、飲む日焼け止めと銘打つほとんどの商品にいずれかが配合されています。

「フェーンブロック」と「ニュートロックスサン」の論文の抜粋と、専門家の見解をそれぞれ見てみましょう。

1.フェーンブロック

フェーンブロックとは

ダイオウウラボシ(シダ植物)から抽出された成分で、成分表記には「ダイオウウラボシ抽出エキス」と記載されます。

フェーンブロックの効果

フェーンブロックの研究については、『肌のクリニック』院長の岩橋陽介氏が自身のブログで以下のように説明しています。

研究報告によると、ボランティア20名に対して、Polypodium Leucotomosから抽出したエキス(フェーンブロック)1000mgを毎日飲んだ場合、UV-BによるMED(24時間後に皮膚に紅斑を生じさせるのに必要な最小紫外線量)が、15日後に14.57%、29日後に20.37%増加し、統計学的に有意な増加を認めた。(※1)

これにより、フェーンブロックは太陽光による紅斑の減少や、紅斑に対する耐性を上げることができると報告しています。

※1.Sergio.S. 2014. The benefits of using a compound containing Polypodium leucotomos extract for reducing erythema and pigmentation resulting from ultraviolet radiation. Surg Cosmet Dermatol;6(4):344­8.

要約:フェーンブロック1000mgを毎日飲んだ場合、MED*が、15日後に14.57%、29日後に20.37%増加。

この論文以外のものを探すと、研究者の一人が1997年に発表したものがあるものの結果が大きく異なり、フェーンブロックの経口投与量を確認することもできなかったそうです。それ以外にはフェーンブロックがSPF3やそれ以上の効果があるなどの報告は見当たらないそうで、結局のところ2014年に発表された上記の論文が現時点で最新のもの。このような総合的な観点から、上記の論文についても疑問に思っておられるようです。

*MEDについては後で説明します。

出典:肌のクリニック院長のブログ『1.飲む日焼け止めの効果は期待できない』

2.ニュートロックスサン

ニュートロックスサンとは

シトラスとローズマリーから抽出したエキスで、成分表記には「シトラス果汁・ローズマリー葉エキス末」と記載されます。

ニュートロックスサンの効果

研究報告によると、ボランティア10名に対してニュートロックスサン250mgを毎日飲んだ場合、MED(24時間後に皮膚に紅斑を生じさせるのに必要な最小紫外線量)が、57日後に34%、85日後に56%の増加を示しました。(※3)

※3.Pérez-Sánchez.A.  2014. Protective effects of citrus and rosemary extracts on UV-induced damage in skin cell model and human volunteers. Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology 136 (2014) 12–18

要約:ニュートロックスサン250mgを毎日飲んだ場合、MEDが、57日後に34%、85日後に56%に増加。

サプリメント会社はこれを基に大々的な広告をしています。しかし岩橋陽介院長はこれにも疑問を呈しておられるので、それを参考に以下まとめます。

MEDとは

MED (最小紅斑量)

出典:環境省

まず、先ほどの論文に出てきたMEDについて説明しておきましょう。

MEDとは最小紅斑量のことで、紫外線を浴びた24時間後、皮膚に「紅斑」を生じる最小限の紫外線照射量。白人・黄色人種・黒人など皮膚のタイプによって異ります。

・・・と言われてもピンとこないかもしれませんが、このMEDを理解するために、神戸大学名誉教授で医学博士の市橋正光氏が非常に分かりやすい説明をされています。

現代人は20歳を過ぎた頃から顔などに「シミ」が出始めます。これが紫外線による老化(光老化)の最初のサインです。現在の人達は年間に平均で200MED(最少紅斑量)の太陽紫外線を浴びています。20年間に換算すると4,000MED(1日だと0.57MED)浴びていることになります。

80歳になって初めてシミがでるくらいに若々しい肌を保つには、1日に浴びても大丈夫な紫外線はわずか0.16MEDとなります。これは夏の真昼の約2分です。あまりにも短いですが、B波を有効に止める「日やけ止め」のSPF値を参考に、目的にあった製品を使用することによって、充分日やけを防ぐことができます。日傘を差し、日影を歩けばさらに紫外線対策としては有効であり、日常生活に不便はないでしょう。子どもの頃からの紫外線対策、また成人してからは戸外でのスポ-ツはもちろん、日常的に紫外線対策をとることによりしっかりと肌を守れば、80歳になっても若々しい肌を維持できるのです!

80歳になって初めてシミがでるくらいの肌を保つために、1日に浴びても大丈夫な紫外線はわずか0.16MED、夏の真昼の約2分だと言うのです。

これには愕然としてしまいそうですが、正しい紫外線対策で防ぐこともできるそうなので、それについてはまた後述しますね。

飲む日焼け止めの紫外線防止効果

岩橋陽介院長の計算によれば、飲む日焼け止めのSPFは以下の通りです。

つまり、飲む日焼け止めの数値は、現行のSPFで測定すると、数ヶ月毎日飲んでもSPFは2にも満たないことになります。

これはあくまで結論だけを引用させていただいたもので、論拠は氏のブログで説明されているのでぜひご覧ください。

それにしても、「毎日飲んでもSPFは2以下」というのにはさすがに驚きました。

出典:肌のクリニック院長のブログ『2.SPFから見ると、飲む日焼け止めの効果はほぼない』

飲む日焼け止めに警告

飲む日焼け止めを巡っては、過去に米国皮膚科学会(AAD)から警告も出ています。

日焼け止め効果は立証されていないと声明

米国皮膚科学会(AAD)は8月22日、日焼け止めを目的とした内服サプリメントに関する声明を発表した。

米国では最近、飲むと日焼けが防げると宣伝するサプリメントがメディアで話題になっている。この声明でAADは、内服薬のみで十分な紫外線対策ができるという科学的エビデンスはまだ得られていないとして、サプリメントを外用の日焼け止めや衣服による防御の代用にしてはならないと警告した。

AADによると、米国食品医薬品局が統制している日焼け対策用品の形態は外用薬のみ。広域スペクトルの日焼け止め(SPF15以上)は日焼けを防ぎ、皮膚癌リスクや日光による皮膚老化を抑えることが科学的に証明されている。AADは、サプリメントを服用するかどうかにかかわらず、日陰の利用、日光を防ぐ衣服の着用、SPF30以上の広域スペクトルの耐水性日焼け止めの塗布などの紫外線対策を勧めている。

記事によると「飲む日焼け止めによって十分な紫外線対策ができるというエビデンスはなく、日焼け止めの代用にはならない」と述べられています。

皮膚科医が日焼け対策に関する疑問に回答

また米国皮膚科学会(AAD)は、紫外線から皮膚を守る説明のなかで飲む日焼け止めについて言及しています。

米国皮膚科学会(AAD)は8月7日、消費者が紫外線から皮膚を保護する上で賢明な意思決定ができるように、日焼け対策グッズの疑問に対する皮膚科専門医Henry W. Lim氏の回答を紹介した。

Q.日焼け止め錠剤は、外用日焼け止めの代わりに使用できるか?

A.錠剤服用は便利な方法に思われるが、日陰を探し、紫外線対策の服を着て、広域スペクトルかつ耐水性のあるSPF30以上の日焼け止めを使用するのが最も信頼できる日焼け対策法である。なお、錠剤は皮膚に塗らないためSPFを評価できない。日焼け止め錠剤に含まれる成分Polypodium leucotomos(中米のシダ類)に関する複数の研究によると、酸化防止効果があり、UV暴露された皮膚が日焼けするまでの時間が延長されることや、多形性光発疹患者の日光過敏を抑えることが示されている。なお、複数の酸化防止物質を配合した錠剤として併用した場合の有効性を支持する研究結果は得られていない。

Q.飲む日焼け止めは、外用日焼け止めの代わりに使用できるか?

A.飲む日焼け止めの服用を支持している論文は公表されておらず、科学的根拠に基づいた的確性があるとは言えない。

Q.食事が日焼け対策において担う役割は?

A.緑茶抽出物による日焼け防止効果に着目した研究は複数あるものの、飲料である緑茶を皮膚に用いた時に日焼け防止効果があることを示した研究はない。ビタミンCとビタミンEにも紫外線のダメージから皮膚を保護する効果があることが示されているが、これらのサプリメントを日焼け対策としては勧めない。

Q.新たに登場した UV監視ブレスレットやアプリケーションは有用か?

A.個人が行うUV監視は興味深いし、日光からの皮膚保護への意識を高めることができるだろう。しかし、UV値を絶えず計測するのか? 携帯電話やインターネットにアクセスしていないときも信頼性が確保されるのか? 有望なツールではあるが、時期尚早ではないだろうか。

米国皮膚科学会(AAD)は「ニュートロックスサンには酸化防止効果があるが、外用日焼け止めの代用として使用するには科学的根拠がない」と説明しています。

正しい紫外線対策

飲む日焼け止めに期待できること

このように専門家や学会の話によると、飲む日焼け止めはその効果が立証されているわけではなく、日焼け止めの代用として使用できるものではないようです。また「毎日飲んでもSPFは2以下」という分析から見ても、飲む日焼け止めに期待できることは「紫外線を浴びて活性酸素が発生した肌を、抗酸化によって助ける」という程度に考えたほうがよさそう。

要するに、現在の研究で飲む日焼け止めに期待できることは、日焼け止めというよりも “抗酸化” です。

参考までに、岩橋陽介院長は抗酸化が認められた成分について以下のように紹介しています。

抗酸化作用が認められている成分は、ビタミンCやビタミンE、βカロチン、リコピン、アスタキサンチン、ポリフェノール、フラボノイド、アントシアニン、ピクノジェノール、αリポ酸、コエンザイムQ10など沢山あり、これらの抗酸化サプリメントも、日焼けや日常で生じる活性酸素の除去、細胞をDNA損傷から守るという研究報告は沢山あります。

飲む日焼け止めの主な働きは「日焼け止めでなく抗酸化」と考えれば、上記の成分を上手に利用する方法もあるわけですよね。

それでは「紫外線からしっかり肌を守る確かな方法」とはどのようなものでしょうか。

環境省が指導する6つの紫外線対策

環境省が紹介する紫外線対策は、以下の6つです。

紫外線対策
  1. 紫外線の強い時間帯を避ける。
  2. 日陰を利用する。
  3. 日傘を使う、帽子をかぶる。
  4. 衣服で覆う。
  5. サングラスをかける。
  6. 日焼け止めを上手に使う。
出典:環境省

これを見ると結局のところ、①紫外線を避けること②日焼け止めを使うこと ・・・この2つ以外に方法はないことが分かります。

この6つの紫外線対策や日焼け止めについては、下のリンクページで詳しく紹介しています。

日焼け後のケアでは遅い

そして加えてお伝えしたい大切なことは、環境省は、日焼けしてからの手入れでは遅いと指摘していることです。

たとえば、日焼け後にローションなどでケアした場合、日焼けの痛みを抑えるなどの効果はあっても、皮膚の老化を防ぐなどの長期的な予防効果は少ないと考えられているのです。

なんだか、ウキウキもキラキラもしない話でガッカリさせてしまったかもしれませんが、ある程度歳を重ねた女性の美肌は、地味な努力の上にようやく手に入れられるものなのかもしれませんね。

日焼け止めを上手に使って、未来の美肌のためにも紫外線対策に勤しみましょう。

GISELEnote

飲む日焼け止めは “抗酸化” として利用するに留めるのが賢いみたい。飲む日焼け止めの効果は「毎日飲んでもSPFは2以下」という専門家の分析にも驚いた。

やはり紫外線対策の基本は「紫外線を避ける」「日焼け止めを使う」という2点に絞られるのですね。「日焼け後のケアでは遅い」という現実も肝に銘じて、しっかり事前の対策をしなくては。

葉月 敬子

美しいもの、機能的なもの、ワクワクする変化。 愛せるものを見つけて、生活がもっと楽しくなる種をお届けできたら幸せ。 ▪ AEAJ認定 アロマテラピーアドバイ...

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